冬が、再び札幌に訪れた。あの、すべてが始まった冬から、三年が経とうとしていた。『Re:bloom』のサロンには、今日も、一人の女性が訪れていた。彼女の名は、山田静香。三十八歳。夫との関係に悩み、自分を見失っていた。まるで、三年前の、凛子、麗奈、咲のように。静香は、ソファに座り、おずおずと話し始めた。「実は……夫と、もう何ヶ月も、ちゃんとした会話をしていなくて……。私、このままでいいのか、分からなくて……」
その言葉を聞いて、三人は、かつての自分たちを見ているようだった。凛子が、静かに口を開いた。「山田さん。あなたのお気持ち、とてもよく分かります。実は、私も、かつて同じ場所にいました」静香は、驚いて顔を上げた。凛子、麗奈、咲の三人は、それぞれの物語を、静香に語った。完璧な妻を演じていたこと。SNSの数字に囚われていたこと。透明な存在として、家族に尽くすだけだったこと。そして、どうやって、そこから抜け出し、自分を取り戻したのか。
静香は、三人の話を、涙を流しながら聞いていた。「皆さん……私と同じだったんですね……」「ええ。だから、あなたの気持ちが、痛いほど分かります」麗奈が、静香の手を握った。「山田さん。あなたは、一人じゃありません。ここには、あなたを理解し、支える仲間がいます」咲が、優しく言った。静香は、声を上げて泣き始めた。三人は、静かに静香を見守った。そして、凛子が、静かに言った。「山田さん。泣いてもいいんです。ここは、あなたのサンクチュアリです」
その言葉は、かつて、栞が三人に言った言葉だった。そして、今、三人が、静香に伝える言葉になった。静香が帰った後、三人は、サロンのソファに座り、お茶を飲みながら、静かに語り合った。「また、一人、新しい仲間ができたわね」麗奈が、微笑んだ。「ええ。そして、その仲間を、私たちが支えていく」凛子が、力強く言った。「うん。私たち、これからも、ずっと、ここにいるわ」咲が、二人を見つめた。
三人は、窓の外の雪景色を見つめた。あの冬、三人は、冷たい檻の中で、窒息しそうになっていた。でも、今は違う。三人は、自由に呼吸している。完璧ではない。時には迷い、時には立ち止まる。でも、それでいい。完璧である必要はない。大切なのは、自分らしく生きること。そして、仲間と支え合うこと。「私たちの物語は、ここで終わりね」凛子が、静かに言った。「ええ。でも、同時に、新しい始まりでもあるわ」麗奈が続けた。
「うん。私たち、これからも、誰かの光になっていくんだもの」咲が、微笑んだ。三人は、手を取り合った。その手は、もう、震えていなかった。確かな、温かい、強い絆でつながっていた。窓の外では、雪が、音もなく降り積もっている。その雪は、かつて凛子が見た、あの自由な雪だ。風に任せて、舞っている。そして、三人も、今、自由に舞っている。完璧な妻という仮面を脱ぎ捨て、素顔で呼吸している。
物語は、ここで終わる。でも、三人の人生は、続いていく。『Re:bloom』のドアは、これからも、開かれ続ける。そして、そこには、いつも、温かい光が灯っている。迷える女性たちを、迎え入れるために。かつて、栞が三人を救ったように、今度は、三人が、誰かを救う。その連鎖が、これからも、続いていく。完璧な妻をやめた、三人の女性たちの物語。それは、終わりと、始まりの物語。そして、それは、すべての女性たちへの、希望のメッセージ。
あなたは、一人じゃない。あなたには、仲間がいる。だから、もう一度、立ち上がろう。完璧である必要はない。ただ、自分らしく、生きればいい。――Re:bloom。再び、花開く。その言葉を胸に、三人は、これからも、歩き続ける。

