夫・洋平から別居を告げられた麗奈は、深い絶望の中にいた。マンションの一室に、麗奈と二人の娘だけが残された。洋平は、別のマンションを借り、そこで暮らし始めた。養育費は振り込まれる。でも、夫婦としての関係は、もう、終わっていた。麗奈は、毎日、娘たちの前では笑顔を作ろうとした。だが、長女の美咲は、すべてを見抜いていた。「ママ、パパと、もう一緒に住まないの?」ある夜、美咲が尋ねた。
麗奈は、何と答えていいか、分からなかった。「……ちょっと、パパとママ、少し離れて暮らすことにしたの」「それって……離婚?」美咲の声が、震えていた。「まだ、そうとは決まってないわ。ただ……」麗奈は、言葉を探した。だが、娘に、何を言えばいいのか。美咲は、涙を浮かべながら言った。「ママのせいだよね」その言葉が、麗奈の心を、貫いた。「美咲……」
「ママ、最近、ずっと変だった。スマホばっかり見て、私たちのこと、ちゃんと見てなかった。パパとも、ちゃんと話してなかった。全部、ママのせいだよ」美咲は、泣きながら、自分の部屋に走っていった。麗奈は、その場に立ち尽くした。娘の言葉は、すべて、真実だった。麗奈は、床に座り込み、顔を覆った。私は、何をしていたんだろう。インスタグラムの数字に囚われて、承認欲求に溺れて、結局、一番大切なものを、失ってしまった。
翌日、麗奈は、栞のサロンを訪れた。栞は、麗奈の様子を見て、何も言わず、抱きしめてくれた。麗奈は、栞の腕の中で、声を上げて泣いた。「全部、私のせいです……。夫との関係も、娘との関係も、全部、壊してしまいました……」栞は、静かに麗奈の背中を撫でた。「麗奈さん。まだ、終わっていませんよ」「でも……もう、洋平は、私を許してくれません」「洋平さんのことは、一旦、置いておきましょう。今、一番大切なのは、娘さんたちとの関係です」
栞は、麗奈の目を見つめた。「美咲さんは、怒っています。でも、それは、麗奈さんを愛しているから。もし、愛していなければ、怒りさえ湧かない。無関心になるだけです」その言葉が、麗奈の胸に、小さな光を灯した。「でも……私、どうすれば……」「まず、美咲さんに、正直に話してください。自分が間違っていたこと。でも、これから変わろうとしていること。そして、美咲さんたちを、心から愛していること」
麗奈は、その夜、美咲の部屋を訪れた。美咲は、ベッドで背を向けていた。「美咲……入ってもいい?」返事はなかった。麗奈は、部屋に入り、ベッドの端に座った。「美咲。ママ、謝りたいの」美咲は、黙っていた。「ママ、最近、ずっと間違っていた。スマホばっかり見て、あなたたちのこと、ちゃんと見ていなかった。パパとも、ちゃんと話していなかった。全部、ママのせい。美咲の言う通りよ」
麗奈は、涙を流しながら、続けた。「でも、ママ、これから変わるから。もう、インスタなんて、どうでもいい。一番大切なのは、あなたたちなの。美咲と、愛華。二人が、ママの、一番の宝物なの」しばらくの沈黙の後、美咲が、小さな声で言った。「……本当?」「本当よ。だから、ママに、もう一度チャンスをください」美咲は、ゆっくりと振り返った。その目には、涙が溢れていた。「ママ……」美咲は、麗奈に抱きついてきた。麗奈は、娘を、強く抱きしめた。
その日から、麗奈は、インスタグラムのアカウントを、すべて削除した。フォロワー1万2千人。それは、麗奈にとって、かつては何よりも大切なものだった。でも、今は、どうでもよかった。それよりも、娘たちの笑顔の方が、何倍も価値があった。麗奈は、娘たちと、毎日、公園に行った。スマホは、バッグにしまったまま。ただ、娘たちと、一緒に遊んだ。美咲と愛華は、最初は戸惑っていたが、次第に、笑顔を取り戻していった。
ある日、美咲が言った。「ママ、最近、優しいね」「そう?」「うん。前のママは、なんか、怖かった。でも、今のママは、優しい」その言葉が、麗奈の胸を、温かく満たした。麗奈は、娘たちを、幸せにできている。それだけで、十分だった。だが、夫との関係は、まだ、修復できていなかった。洋平は、月に一度、娘たちに会いに来るだけで、麗奈とは、ほとんど会話をしなかった。麗奈は、それが、辛かった。でも、今は、焦らないことにした。まずは、娘たちとの関係を、しっかりと築くこと。それが、今の麗奈の、最優先事項だった。

